【ネコノミクス】の先に猫の幸せはあるか?【猫】の現実を考える

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【ネコノミクス】という言葉を聞いたことがありますか?

2015年頃からマスコミで使われるようになった、一言でいうなら「猫のもたらす経済効果」の ことです。

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猫は遣隋使以来、船中のねずみ退治のために大陸から日本に連れてこられ、日本でも買われるようになったと言われます。

平安時代はまだ珍しいペットで、宮中で買われていました。『枕草子』には「命婦のおとど」と呼ばれる一条天皇の愛猫(五位の位を授かり、人間の乳母があてがわれて大切にされていた)が登場するほか、猫に関する記述が随所に出てきます。『源氏物語』でも「若菜上」の巻に、源氏物語後半の大事件のきっかけをつくる重要な役割を果たしています。光源氏が年長けて結婚した女三の宮という女性が飼っていた猫がじゃれ合って、室内を隠していた御簾(すだれ)を引き上げてしまいます。庭ではかねてより女三の宮に思いを寄せていた柏木(光源氏の親友・ライバルの太政大臣の息子。光源氏の息子夕霧の親友。)が蹴鞠に興じていて、女三の宮の姿を垣間見てしまう。その結果、柏木は女三の宮と密通し、果ては病死してしまうのです。

こうした貴重な愛玩動物だった猫ですが、ねずみを捕ってくれる益獣として次第に庶民に広まり、江戸時代、有名な「生類憐れみの令」が廃止されてから一挙に江戸庶民に愛されるようになったと言われます。日本は農業国でしたから、農家でよく飼われていたこともあり、猫はポピュラーなペットとなりました。

ここ数年、ペットの猫の数が犬を抜く勢いとなり、【ネコノミクス】という造語まで出現しました。この【ネコノミクス】の問題についてまとめてみたいと思います。

目次

  1. 【ネコノミクス】とは
  2. 【ネコノミクス】出現の背景
  3. 【ネコノミクス】具体的な経済効果
  4. 【ネコノミクス】の今後
  5. まとめ

1.【ネコノミクス】とは

【ネコノミクス】とは、猫のもたらす経済効果のことを、安倍晋三内閣の「アベノミクス」をもとに2015年頃から使われ始めた造語です。

東京都の試算によれば、東京五輪が及ぼす経済効果は、1年間あたり約1兆8000億円になるといいます。けれども「ネコノミクス」はその比ではあろません。経済効果はなんと年間2兆3000億円にのぼります。

試算を行なった関西大学の宮本勝浩名誉教授(理論経済学)は、次のように解説されています。

「昨今の猫ブームを受けて“猫がもたらす経済効果”を調べました。その結果、餌代や動物病院など猫1匹の飼育にかかる費用が年間11万1424円、これに猫の飼育頭数約987万4000匹(ペットフード協会算出。2015年)を掛けると1兆1002億円になる。これが猫の飼育に関する経済効果です。 他にも、猫の写真集やグッズなど関連商品の売り上げが年間約30億円、観光関連効果が約40億円、さらに『猫カフェ』での飲食代など、もろもろの波及効果を含め、2兆3000億円になりました」ネコノミクスはさまざまな業界に波及している。 戦前から続く建築雑誌『建築知識』では、今年1月号で「猫のための家づくり」を特集したところ、4万5000部が完売。9月には特集内容を加筆修正した単行本まで発売した。 「最近は室内飼いの猫が増えてきているという情報を得て、『猫向けの家造りの需要もあるだろう』と思い企画しました。普段の講読層は男性が大半ですが、この号は女性にも手に取ってもらえたことが売り上げに繋がったのだと思います」(『建築知識』の三輪浩之編集長)

2018年5月28日の「日本経済新聞」電子版によると、【ネコノミクス】は日本だけでなくアジアにも広がっており、中国のキャットフード市場規模は2022年に日本を超えると予測され、マレーシアでは初のネコ用品展示会が開かれたそうです。日本のペット関連企業もアジアでビジネス拡大に力を入れているということです。

2.【ネコノミクス】の背景

犬猫の飼育頭数推移

出典:2017年12月飼育頭数統計調査(日本ペットフード協会)

グラフからわかるように、2017年には猫の飼育頭数がいぬの飼育頭数を上回りました。飼育世帯(飼育率)でみると、犬は12.84%(前年比△0.72%)、猫はが9.71%(前年比+0.15%)と犬の方が高くなります。しかし、平均飼育数が犬は1.24匹、猫は1.75匹のため、結果的に猫の飼育頭数が犬の飼育頭数を上回ったわけです。

背景のひとつには、現代日本の家庭事情や住居形態の変化があります。

戦前は大家族が同居しており、3世代同居は一般的であった。戦後高度成長期になると、核家族が増加し、世帯数は増加したが、平均世帯人数は逆に減少している。現在は家族形態が多様化し、未婚率が上昇し晩婚化により少子化が進み、結果として平均世帯入数が2.4人まで減少しています。夫婦のみ世帯や両親と未婚の子どものみの世帯が増加しています。

少子高齢化が進むとともに離婚率も増え(平成27年度の厚生労働省の調査によると、婚姻件数は63万件あるのに対し離婚件数は22万件にものぼり、せっかく結婚した夫婦が1年間に離婚する数も驚くほど多いそうです。)、生涯結婚しない人も増えています。(2017年4月3日に国立社会保障・人口問題研究所(厚生労働省管轄)2015年度集計データによると生涯未婚率は男性23.6%、女性14.1%です。)

1家族あたりの人数が減るにつれ住宅の需要も変わり、集合住宅や、戸建てでも隣接する家との距離が近い(敷地が広くない)家に住む人の割合も増えます。

騒音問題総合研究所代表 橋本典久のブログによると、街の雑踏が60~70デシベルであるうのに対して、犬の鳴き声は小型犬でも5m離れても90デシベルあります。窓を閉めた時の壁の遮音性は30デシベルぐらいで、室内では60デシベルぐらいになり、騒音となります。逆に室内で飼っていても同じくらいの騒音が外に漏れることになります。避妊・去勢をしている猫の鳴き声は25デシベルくらいだそうなので、騒音になることがありません。

最近の賃貸住宅の中には、猫のみ可、というところも少なくないようです。

さらに、高齢者や多忙な方は犬の散歩も負担になります。しつけも大変です。猫の場合、トイレのしつけもほとんど必要なく、完全室内飼いが可能です。それほど広い家も必要ありません。また、シャンプーをしなくても良いし、臭いも少ないです。

費用からみても、犬種にもよりますが、犬は一匹あたり20万円~30万円かかると言われるのに対し、猫は上記の通り11万2414円で、経済的な負担も少ないことも、猫の飼育が増えた理由と考えられます。

こうして猫を飼う人が増えたことと、映画やCM、ブログなどの人気猫(ドラマ『猫侍』のさくらちゃん、あなごちゃん。YモバイルのCMの春馬くん。くるねこ大和さんのブログ、漫画などのねこちゃんたち。)、岩合光昭さんの『世界猫歩き』等の人気番組が話題になったことが相乗効果となって、猫ブームを呼んだのだと考えられます。

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3.【ネコノミクス】具体的な経済効果

東京2020の予想収益を超えるとも言われている【ネコノミクス】、具体的にはどのような市場を背景にしているのでしょうか。

①猫を飼うための消費

  • 猫をペットショップで買う場合、猫の価格
  • ケージやトイレ、キャリーなどの「家具」
  • フード、おやつなど「食品」
  • おもちゃ、猫用CDなど「遊興費」
  • 去勢・避妊手術代や予防接種(義務ではありませんが必要です)、病気の治療などの「医療費」
  • 亡くなった場合の葬儀費用、ペット用仏壇などメモリアルグッズ
  • サプリメント、保険など

②猫関連商品等の消費

  • ぬいぐるみ、招き猫などの猫グッズや洋服などの商品
  • 猫が登場する書籍、映画、ゲーム、BDなど
  • 猫カフェなど
  • 猫神社、猫島などへの観光

③消費の活性化による波及効果

  • ①②の結果、経済的に余裕ができた関係者の消費

先に引用した関西大学宮本教授の試算は、これらを総合したものと考えられます。

また、【ネコノミクス】はほかのペットへの関心を高める効果もあり、ハリネズミ、カワウソ、インコなど、ペット市場が賑やかになっているようです。

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4.【ネコノミクス】の今後

東京都内や名古屋、京都などに12店舗を展開する「猫カフェMoCHA」。筆者の家族も行ったことがあるのですが、おしゃれな内装で猫の数も多く、賑わっている人気の猫カフェです。

そんなMoCHA立川店で2018年7月末、猫がパルポウィルスに感染する事件がありました。

8/2にモカ立川店でパルボウィルスによる感染発生が正式発表されました。全店舗の消毒で安全を確保して頂けるそうです。 ただパルボの潜伏期間や生命力の強さを鑑み 7/1以降モカさん全店及び系列店僕と猫さんをご利用された方は当面の間ご入店をお断りさせて頂きます。 ご理解ご協力をお願い致します。— 猫まる茶屋 (@nekomaruchaya) 2018年8月2日</blockquote> https://platform.twitter.com/widgets.js

NPO法人 東京キャットガーディアンのHPによると、猫パルボウイルス感染症(FPLB)は、非常に死亡率の高い病気で、ワクチン未接種で免疫のない個体への感染率はほぼ100%といわれる恐ろしい病気です。猫パルポウィルスは非常に安定したウイルスで、3年間は生存し、室温以下では1年以上感染性を保持、30℃以上の外気温でも、数ヶ月以上生存すると言われています。しかも、一般的な消毒薬が効かないそうです。

感染個体の糞便はもちろん、ノミなどの媒介物、ケージ、食器、フード、被毛にいたるまでが感染経路となりうるため、消毒だけで感染のリスクを排除することは非常に困難です。パルポウィルスに感染した猫ちゃんがいた立川店の従業員や、来客を通して感染が広がる可能性があるわけです。

パルポウィルス感染症は、予防接種によって防げます。Mocha立川店では、予防接種をしていなかったか、まだできない幼い猫を展示していたのでしょうか。また、Mocha各店では頻繁に新しい子猫の歓迎会が催され、3歳ぐらいで卒業してしまいます。その猫ちゃんたちはどこへ行くのでしょう。

猫ブームの中、こうしたずさんな管理をする業者がほかにもあるかもしれません。

猫の多頭飼育崩壊やの話題もよく耳にします。既に2016年11月15日、NHK「クローズアップ現代+」№3892で取り上げられています。(http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3892/1 html)

2018年になってから大きく取り上げられた多頭飼育の問題は、ちょっとググっただけでもこんなにあります。

  • 2018年3月29日 ネコの共食いが起きて「ホッとした」 多頭飼育崩壊の壮絶現場埼玉の一軒家から猫24匹を「救出」(弁護士ドットコム)
  • 2018年5月9日埼玉県の民家で猫40頭多頭飼育崩壊( アルマ東京ティアハイム ブログ)
  • 2018年6月11日、名古屋市の市営住宅で45匹の猫を飼育し問題となっていた女性が集合住宅から「強制退去処分」となった。 (リア・ニー!:RNO)

また、ブリーダーの無責任な繁殖のさせ方も問題になっています。その背景には、 猫には交配可能な「発情期」が多いこともあります。成熟したメス猫の発情には、日照時間が大きく関係しています。特に日照時間が延び始める1月から、9月ごろにかけ発情が増えて繁殖期となり、この時期に多くの子猫を産みます。しかし、年間を通して人為的に照明の光を長時間浴びさせると、何度も発情が起こってしまうことがあるのです。発情したメス猫は、オス猫と交配した刺激で排卵します。

優良ブリーダーはメス猫の体を思いやり、年に1回程度の繁殖にとどめます。ところが、利益だけを追う繁殖業者やブリーダーは先述の猫の性質を「悪用」し、人工的に照明を長く浴びせて年に何度も繁殖させているのです。人気の猫種は「高値で売れるうちに」と繁殖の回数を増やされ、体にも負担がかかりボロボロになっています。 妊娠すると約2か月で子猫が生まれます。子猫は生後1か月で乳離れしますが、子育て中にも照明を浴びせられ、再び発情期を迎えるメス猫もいます。繰り返せば、最多で年に4回もの出産が可能といわれます。 親猫にとってはケージに閉じ込められたまま、ただ、子猫を産むだけの日々……ブームがこのような事態に拍車をかけていると筆者は考えています。そして、子猫の健康も親猫の健康状態に大きく左右されます。親猫の健康を考えずに繁殖を続ければ、必ずどこかに「しわ寄せ」がくるはずです。利己的な繁殖はやめるべきだと思います。

ブームに乗って儲けようとする人々が少なくありません。

飼い主にも責任が求められます。

かつて、チワワやシベリアンハスキー、白い北海道犬がブームになり、飼う人が増えたことがありました。ブームが去ったあと、捨てられる犬がたくさんいたと聞きます。白い犬を飼い、子どもに「この犬しゃべらないから捨ててきて」と言われて動物指導センターに犬を持ち込んだ父親がいたそうです。

猫は玩具ではありません。動物ですから、思いどおりにはなりません。お金もかかります。また、高価な純血種は病気になりやすく、日本の気候に合わない種類もあり、十分なケアが必要です。

「猫を飼う」ということは(もちろん犬やほかのペットも同じです。)家族、しかも2,3歳の赤ちゃんが増えるということです。赤ちゃんはだんだん大きくなって話せるようになるし、自分のことを自分でできるようになります。しかし、猫はそのままです。いたずらもするし、粗相をすることもあります。病気にもなりますが、どこが苦しいのか伝えることが出来ません。

ブームにはいつか終わりが来ます。そのとき、捨てられたりこっそり処分されたりする猫ちゃんがいないことを祈るばかりです。

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5.まとめ~猫の人の本当の幸せのために~

筆者の好きな猫漫画『ポヨポヨ観察日記』第11巻(竹書房 2012年11月10日初版)の後書きマンガで、作者の樹 るうさんが書いています。

漫画という「商品」を提供する視点で作品を見た時、たまに思います。「殺生しないキャラだったら、もうちびっと売れたりしたかしらん?ウ★コもするし★ロも吐くし。 でも、ポヨを猫らしくリアルに描くのは、私のこだわりです。動物の生態を人間に都合良く歪めて描く事が、動物を危険に晒す例を山ほど見てきたからです。 漫画やCMで人気の出た動物が次々と売買され、保健所に送られています。(中略) 例えばポヨの漫画やアニメを見て育った子が、大きくなって念願の猫との生活を始めたとします。その時猫は当然アレコレやらかしますが、「ポヨやクロベエと同じ事してるよ。猫ってほんとうにこんななんだな~。」そんな風に、この作品を思い出してもらって、こういう悲劇(筆者注:保健所送りの話のこと)が少しでも減ったら良いな、と。 それがポヨに託した夢のひとつです。

「ポヨ」「クロベエ」は作品に登場する猫の名前です。主人公の猫は農家で飼われる保護猫で、ネズミや虫を捕る場面やリアルな猫の日常が明るく描かれています。主人公の弟のガールフレンドは雑種犬を飼っており、この犬もいろいろとやらかします。

ほんとうは完全室内外をお勧めしたいところですが、農家の猫には仕事がありますから、ポヨちゃんのように健康管理をしていれば(頻繁に獣医さんに診てもらっています)致し方ないかと思います。私は樹 るうさんの考え方に共感しました。

猫との出会いもいわば運命です。天から授かった命を世話させていただく、という気持ちが、ペットを飼うことの基本になければならないと考えます。

もちろん獣医師の診察は高額ですから、諦める選択をしなくてはならない場面もあるかもしれません。しかし、人間も猫も犬も同じ命であることを「ありがたく」思うべきではないでしょうか。

『 なるほど! の本 猫のしもべとしての心得 』(NHK出版なるほど!の本)単行本( 2017年6月23日刊)今泉 忠明 (監修) 猫のしもべ連盟(編集) 岡田 千晶(イラスト) という本が話題になりました。帯には「猫さまにお仕えする これにすぐる悦びはございません。」と書かれています。

内容は猫の飼い方をわかりやすく説明した本なのですが、「しもべ」は言い過ぎだとしても、少なくともパートナーアニマルとしての畏敬の念をはらいつつ、短い猫との生活の中で「一緒に暮らしてくれてありがとう」の気持ちを持ち津透けたいと思うのです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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